速読と熟読
私は速読派であるが、それではどうにも対応できない本があるというか、限界を感じてきている。
情報を得るだけの読書なら速読でよい。しかし、読書を血肉とし、自分の考え方の殻を破り、一段階成長させるには熟読しなければならない。
そう思い、この本を選んだ。熟読にふさわしい本だと思う。しばらく本書の記事を週一ペースでアップしていく予定だ。
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5000年史
本書はⅠ(古代・中世編)Ⅱ(近世・近現代編)の2冊を通して、人類5000年の歴史を網羅してしまおうという、ある意味無茶な本である。
日本史とか世界史といった括りはない。しかも5000年。西暦は2000年ちょっとである。スケールがデカい。
これからこの壮大な物語を読んでいくわけだが、まず冒頭、歴史を学ぶ意味について、著者の見解が示されている。
歴史を学ぶ意味
別に学者ではない私のようなビジネスパーソンにとって、歴史を学ぶ意味は何なのか。
同じくビジネスパーソンである著者の出口氏は、ヘロドトスの『歴史』という本を引用し、こう述べている。
「本書はハリカルナッソス出身のヘロドトスが、人間界の出来事が時に移ろうとともに忘れ去られ、ギリシア人や異邦人の果した偉大な驚嘆すべき事蹟の数々ーとりわけて両者がいかなる原因から戦いを交えるに至ったかの事情ーも、やがて世の人に知られなくなるのを恐れて、自ら研究調査したところを書き述べたものである。」(『歴史(上)』ヘロドトス著、松平千秋訳、岩波文庫
要は、人は過去の失敗をいつしか忘れ、同じ過ちを繰り返してしまうから、せめてここに書き留めたことを見て学んでくれ、ということだ。
昔は主張が異なれば武力で解決し、強いものが弱いものを略奪するのが当たり前だったのかもしれない。
しかし現在では、基本的には話し合いや裁判で解決され、グローバルに平和を保とうとする機関が存在している。
歴史は繰り返すという言うけれども、人間は歴史から学び、少しずつは賢くなっているのかもしれない。
また、私は人と会話する時、よくその人の「ルーツ」に注目する。
人間はその家族や生まれた土地、文化などに強く影響を受けて成長すると思っている。
今グローバルで様々なことが起こっているが、そのルーツに注目すべきである。
国や民族の歴史を紐解くことは、そのルーツを知ることになり、世の中に起こっていることを理解する助けになる。
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著者の出口治明氏について
1972年 日本生命入社 ロンドン事務所長などを歴任
2008年 還暦でライフネット生命保険株式会社を創業
2018年 立命館アジア太平洋大学(APU)第四代学長に就任
一流のビジネスパーソンでありながら、稀代の読書家として知られている方だ。
現在所属のAPUだが、なんと約半数の学生が外国籍である。
http://www.apu.ac.jp/home/about/content57/
世界のルーツを知り尽くした著者でなければ務まらない役職かもしれない。
最後に
ただ情報を得るだけでなく、自分を一段階成長させる熟読におすすめの1冊。
歴史を学ぶ意味。最後にローマの文筆家キケロの言葉で締める。
自分が生まれる前のことについて無知でいることは、ずっと子供のままでいることだ キケロ