「amazon」と聞くと、南米のジャングルではなく、EC大手の米amazonを思い浮かべる人が多いだろう。
その名もズバリ『amazon』という本を読んだ。現代の企業戦略を理解するにはamazon一社を押さえておけばいいらしい。
ちなみにamazonの時価総額は約77兆円。日本の時価総額トップはトヨタで、その額は24兆円。その差は3倍以上。圧倒的な差がついている。
「コミュニケーションは最悪」はamazonのCEOジェフ・ベゾスの言葉である。コミュニケーションはなぜ最悪なのか?amazonの経営戦略とともに紐解いていこう。
超多角化企業amazon
「コミュニケーションは最悪」の部分を本『amazon』から引用する。
数人のマネージャーが従業員はもっと相互にコミュニケーションを取るべきだと提案したところ、ベゾスが立ち上がり、「コミュニケーションは最悪だ」と力説したという。ベゾスにとって、コミュニケーションを必要とする組織は、きちんと機能していないという証拠でしかないというのだ。
その真意はどういうことだろう。
amazonは前述の通り超巨大企業であり、その事業も超多角化している。amazonのECサイトには、3億以上もの商品が存在し、ジャンルも様々。本から始まり、パソコン、家電、服、化粧品、ワイン、食料品、洗面用具、電子書籍、挙げ句の果てには車も売っている。なんでもありだ。
リアル店舗もある。米生鮮食品のホールフーズを買収したのは記憶に新しいだろう。日本ではあまり知られていないが、amazonオリジナルのアパレルブランドがあったりする。
同時にamazonは物流企業でもある。自前のトレーラー持っていて、Fedexやヤマトと競合してくる可能性は高い。
他にはクラウドサーバ事業であるAWS(Amazon web Service)。こちらはマイクロソフトを抑えて市場規模トップ。Amazon Musicでは音楽を配信しAmazonプライムビデオは映像を配信している。もちろん自前で作ったドラマも多数ある。
なぜここまで多角化してうまくいっているのだろうか。
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amazonのコミュニケーション
①KPI
特筆すべき点の一つ目は、KPI管理だ。KPI(Key Performance Indicator)はどこの企業でも設定していると思う。例えば営業目標などだ。
amazonはその管理がものすごく細かいらしい。
月、週、日などの期間を決めて、業務内容によって細かく設定された目標を達成したかどうかをチェックしていくのだ。(中略)アマゾンのKPIはもっと極端に細分化して管理しているという。システムの稼働状況はもちろん、顧客からアクセス数、コンバージョンレート、新規顧客率、マーケットプレイス比率、不良資産率、在庫欠品率、配送ミスや不良品率、1単位の出荷にかかった時間などに細分化されている。
恐ろしいのは、このKPIの目標管理を0・01%単位(通常は0・1%単位)でしていることだ。
このKPI管理で多角化した事業を常に把握しながら経営を進めているのだろうが、注目すべきは、これによるコミュニケーションコストの削減である。
経営会議などでしばしば、報告内容が不明瞭であったり、網羅しておらず不足していることがある。その際は経営者が事業部長を叱責するといったことが行われる。
だがamazonではそれがないのだろう。
細かく数字で管理されているのだから、資料に記載された数字をすべて見れば報告は完璧だ。「ここの状況をもっと詳しく教えてくれ」といったやり取り極小化される。今後の対策をどうするかなど、もっと生産的な議論に時間を使うことができる。
冒頭のベゾスの言葉の通り、数字ですべて把握できていればコミュニケーションは不要となる。
②API
また、amazon全体を下支えしているのはテクノロジーであるが、テクノロジーの部署とのやり取りは徹底的にAPI化されているらしい。
どういうことかというと、サーバを新しく作って欲しい時、データベースを新しく作って欲しい時、ドメインを変更してほしい時、顧客へのメール設定をしてほしい時、などなどのケースでテクノロジー部署に申請を行うと思うが、その申請フォーマットが完全に決められているということだ。
わざわざメールを送るなんてことはしない。「〇〇さん お世話になっております。」とか書くのが無駄だ。
そうではなく、画面もしくはコマンドを打っておしまいだ。それが先方に届くと、「受けつけました」といったメッセージが自動で返ってくる。もちろんこのメッセージはテクノロジー部署の人が手で打ったものではない。自動で応答されるしくみだ。
テクノロジー部署の人は何もしない。サーバは申請を受け付けたら勝手に起動するしくみだからだ。つまり、コミュニケーションコストが全く発生せずに完結する。テクノロジー部署の人はエラー通知が来ない限りは何もしなくて良い。
ここでも徹底したコミュニケーションの効率化が実現されている。
ちなみに、これのおかげでAWSはサポートや営業の人手はあまりかからないし、世界に展開するのも早かった。
本当に必要なコミュニケーションとは?
コミュニケーションの効率化というと、ベゾスが冷徹人間に思えるが、そう決めるのは早い。もしかしたら気軽に雑談なんかをする人間なのかもしれない。
効率化できるコミュニケーションとそうではないコミュニケーションに分けるべきだと思う。
そして前者は最悪だ。経営会議での不毛な押し問答や、事務的なメールのやりとり。こんなコミュニケーションはお互いストレスになるだけだろう。
最悪のコミュニケーションに時間をかけず、本当にコストをかけるコミュニケーションは何なのか考えよう。