歴史の本を読むと、「こんな偉大な人物がいたのか」といつも驚かされます。
作家の塩野七生(しおの ななみ)氏は長年イタリアに住み、イタリアの歴史を多く書いてきた方です。
代表作は『ローマ人の物語』『チェーザレ・ボルジアあるいは優雅なる冷酷』など多数。
文学者から経営者まで、塩野氏のファンは多いです。
本作は『皇帝フリードリッヒ二世』というひとりの天才に焦点を当てた歴史物語です。
中世とは
舞台は中世ヨーロッパ。
中世は一言で言うと、暗黒の時代です。
イタリアが世界的に発展していた時代は、ローマ帝国の頃とルネサンスの頃。
中世はその間です。
ローマ帝国が東西に分裂し、西ローマ帝国が滅び、ルネサンスが花開く前までの時代。
中世期の『十字軍』は有名ですね。
キリスト教のローマ法王が聖地エルサレムの奪還をもくろみ、十字軍を何度も送りますが、失敗に終わります。
本作の主人公であるフリードリッヒ二世が生まれたのは1194年。
ルネサンスが興る200年前くらいでしょうか。
キリスト教による多様性を排除した支配が蔓延する中、フリードリッヒは先進的な、多様性を重んじる考え方を持った皇帝てす。
ちょっと生まれてくるのが早すぎましたが。
スポンサードサーチ
皇帝フリードリッヒ二世の偉業
フリードリッヒの生涯はとにかく忙しい。
- 当時存在しなかった「イタリア語」のスタート
- 西洋初の国立大学(現ナポリ大学)の創設
- アラビア数字ゼロの導入
- アリストテレスの著作翻訳
- ローマ法を元にした法律 『メルフィ憲章』 の整備
- 法王と皇帝の『政教分離』の主張
- 裁判制度の確立
結婚は何度かしており、愛人も多くいて、子だくさんでした。
嫡出子と非嫡出子を分け隔てなく育てました。
趣味は「鷹狩り」。鷹狩りに関する著作を遺しています。
よくもまあ、1人の人間がこれほど精力的に動けたものだと思います。
皇帝フリードリッヒ二世の思考
このフリードリッヒの考え方は、以下の文に現れています。
すべてはあるがままに、そして見たままに書くこと。なぜなら、この方針で一貫することによってのみ、書物から得た知識と経験してみて初めて納得がいった知識の統合という、今に至るまで誰一人試みなかった科学への道が開けると信ずるからである。
フリードリッヒが遺した「鷹狩り」の著作の一文です。
現代風に言うと『ファクトベース』。
中世はキリスト教が支配していたので、信仰が重要でした。生前に善い行いをすれば天国にいけると。
ファクトとは真反対の時代でした。
フリードリッヒは幼い頃から本好きで、ひたすら色んな本を読んでいました。
そして本を読んだ後、王国各地の巡業の旅に出かけています。
書物に書いてあることが本当なのか、確かめに行ったのでしょう。
本を読むだけで終わらせず、自分の眼で確かめに行く。
それがフリードリッヒ流です。
現代の私達の旅行も、こうであったほうが面白いですね。
旅行の前に、その国に関する書物を読む。ガイドブックは概要だけなので、もう数冊読むといいでしょう。
そして実際にその地を訪れてみる。
それを「科学への道」と表現しています。
これから数回に分けて、『皇帝フリードリッヒ二世の生涯』の書評を書いていこうと思います。
本作は上下巻存在し、ハードカバーの重たい本なので、Kindleをお持ちの方はKindle版で読むことをおすすめします。
まだ塩野七生さんの本を一度も読んだことがない方は、『チェーザレ・ボルジアあるいは優雅なる冷酷』がおすすめです。
他の作品に比べて分量は多くないので、この一冊から入るとよいでしょう。
書評②はこちら。